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企業間融資の複雑さを解決する

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企業間融資の複雑さを解決する

この記事は、S&Pグローバル・レーティングから独立したS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス部門によって執筆、発表されたものです。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのクレジットスコアは、S&Pグローバル・レーティングにより発表される信用格付けと区別されています。

多国籍企業(MNE)において、子会社や関連会社に資金提供するための企業間ローンの利用はますます一般化する見込みであり、これらのローンの価格設定は、多くの企業が直面する国際税務上の最大の問題の1つとなっています。「アームズレングス(独立企業間)」原則は、関連する2つの企業について、関連しない2つの企業が同一または類似の取引を行った場合と同じ移転価格を企業間取引に設定することを要求しています。したがって、この価格は、2つの企業が競争市場で交渉した場合に得られる価格を反映しています。

移転価格のその他の用途に懸念の声も

移転価格はまた、企業がより低税率の国・地域に負債をシフトできる、タックスプランニングの手段として不正に使用されることがあります。その結果、世界中の当局が取引を注意深く監視するようになっています。経済協力開発機構(OECD)によると、多国籍企業が異なる諸国間の税制のギャップやミスマッチを利用することによる国内の税源浸食および利益移転(BEPS)は、すべての国に影響を及ぼしています[1]。発展途上国では法人税への依存度が高いため、BEPSの影響をより大きく受けることになります。

2020年2月、OECDは、納税企業、監査人、税務当局に対して2017年ガイダンスの原則の適用を明確化するため、「金融取引に係る移転価格ガイダンス(Transfer Pricing Guidance on Financial Transactions)」(以下「ガイダンス」)を公表しました。2021年10月、136の国・地域が、国際課税のルールを改革し、多国籍企業が活動場所を問わず公平に納税できるようにするための、2つの柱から成る新プランに参加しました。

移転価格の適切な把握は、かつてないほど重要性を増しています。本ブログでは、企業の財務担当者、監査チーム、税務アドバイザリーグループを支援し、独立企業間基準とガイダンスの遵守を促すために、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスが開発した独自のアプローチを紹介します。

適切な企業間金利の設定

世界的な規制やガイドラインが増え続ける中、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスは、クロスボーダー取引の価格設定を管理するには、適切なデータとツールを利用できることが重要であると理解しています。このような状況を受け、信用取引の価格設定を迅速に行うための合理的なツールとしてローンチしたのがCredit Risk Pricingです。4ステップのアプローチにより、ユーザーは企業の信用力を簡単に評価し、独立したクレジットスコア[2]を作成し、ガイドラインにすべて沿った方法で比較可能な利回りと正当性のある金利を特定できます。ステップは以下のとおりです。

ステップ1:子会社または関連会社の財務データを入力または抽出

分析は、企業財務の包括的なデータベースを活用し、弊社のクレジットスコアリングインターフェースで企業のクレジットスコアを自動生成することから始まります。また、ユーザーが独自の財務データを手入力したり、画像やPDFから自然言語処理でデータを自動抽出・入力するS&P ProSpreadTMを利用したりすることも可能です。

インターフェースのこのセクションでは、国や産業別のリスク要因も提供し、分析対象の国-業界の組み合わせも捕捉します。これらのインプットは、ユーザーが別の視点を採用する場合、調整することができます。

ステップ2:オプションの調整(定性的およびオーバーレイ)を適用

このステップでは、作成されるクレジットスコアにプラスにもマイナスにも影響する、以下の4つの分野を考慮しています。

定性的要因:ガイダンスは、定性的情報の追加を提案しています(入手可能な場合)。これにはたとえば、子会社が国/製品ライン/顧客層ごとにどの程度分散されているか、マネジメントの質、支払い行動などが含まれます。

親会社・政府の支援(Parental & Government Support(PGS): ガイダンスは、PGSが借り手の信用力やクレジットスコアに影響を及ぼす可能性があることを認めています。この機能は親会社の財務健全性を考慮し、(判明していれば)ユーザーは親会社の支援に対する期待値が正、負、または中立のいずれであるか示すことができます。

デフォルト時損失(LGD):ガイダンスには、発行体格付けと債券格付け[3]の両方が入手可能な場合、債券付けの方が取引の価格決定にとって適切であると記載されています。

マクロ経済的要因:ソリューションは、幅広い経済的要因(金利、失業率、GDPなど)の最新データを提供します。ストレステスト機能によりさまざまな状況を検討し、プラスまたはマイナスの環境が子会社または関連会社のクレジットリスクに与える影響などを確認できます。

ステップ3: オプションの調整を加えたクレジットリスク・スコアをアウトプット

財務数値とオプションの調整を入力すると、クリックするだけで、弊社のCredit Analyticsモデルを使用して生成された、パーセント単位のデフォルト確率(PD)と関連するレターグレード(ABC評価)のクレジットスコアが表示されます。また、ステップ2で列挙した情報を入力すると、LGD調整後のクレジットスコアと、子会社や関連会社のマクロ経済影響値が表示されます。

ステップ4: 最終的な金利と構築されたイールドカーブのアウトプット

最終的なクレジットスコアは、イールドカーブを使用してComparable Uncontrolled Price(比較可能な非関連者間価格)(CUP)と最終的な金利の決定に使用されます。これは、企業間ローンの文脈では最も適切なアプローチと考えられていますが、このような取引に関する公開データが大量に入手できることもその理由の一つです。このベンチマーキングでは、S&P Capital IQのコーポレートボンドイールドカーブが自動的に使用されます。複数の主要通貨、各GICSにわたり、クレジット期間構造(1か月~30年)の幅広く一貫したカバレッジを提供します。[4]

分析結果の便利なサマリー

以下の図1に示すように、最終的なアウトプットは、Credit Risk Pricingの結果ページで要約されて表示されます。これには以下が含まれます。

      • 金利と最終的なクレジットリスク・スコア
      • オールイン・イールドカーブ、Zスプレッド・カーブおよびテーブル
      • 個別の証券発行体のリスト
      • 価格設定の根拠(編集可能なテキスト付き)

このページはPDFやWord文書としてエクスポートし、企業の移転価格文書に含めることができます。

図1:クレジットリスク・プライシングのページ

使いやすいインターフェースで、堅牢なデータセットと分析モデルを組み合わせた段階別のアプローチが、移転価格の複雑さを軽減しています。

これらはすべて、独立企業間原則(アームズレングス原則)を満たし、ガイダンスを遵守しながら行われます。

[1] 「International collaboration to end tax avoidance(租税回避をなくすための国際協調体制)」、OECD、2021年10月19日のウェブサイト、2021,www.oecd.org/tax/beps/より。

[2] S&Pグローバル・レーティングはS&P グローバル・マーケット・インテリジェンスによって算出されるクレジットスコアの作成に寄与も参加もしておりません。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスPDクレジットモデルスコアは、小文字の表記によって、S&Pグローバル・レーティングにより発表される信用格付けと区別されています。

[3] 信用格付けは、この文脈においてクレジットスコアと同じ意味を持ちます。

[4] GICS=世界産業分類基準。

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