S&P テーマ別ダッシュボードの創刊号に続いて、7月号では多様なテーマの月次パフォーマンスを分析し、市場の主な動向を明らかにしています。本ダッシュボードはTheia Insightsと共同開発したものであり、各テーマを切り口に市場動向を捉えるツールとして設計されています。世界経済を形成する約200のテーマに焦点を当て、多角的な視点から市場パフォーマンスを分析します。本ダッシュボードでは、パフォーマンスが好調なテーマと低調なテーマにハイライトを当て、マクロ指標やセンチメント指標も考慮に入れるとともに、地域、セクター、メガトレンド、及びファクターといった幅広い観点から洞察を提供します。
今月の主な市場動向としては、AI関連のインフラ需要の拡大、精密医療技術への投資家の関心の再燃、エネルギー転換分野における成長トレンドの継続などが挙げられ、これらが今月のテーマ別パフォーマンスを牽引する要因となりました。一方、伝統的なヘルスケア分野(例えば、医療保険)や消費関連のテーマはアンダーパフォームしました。さらに、暗号資産セクターに関する法整備が進んだことから、暗号資産分野全般(特にステーブルコインなど)に対する投資家の楽観的な見方が強まりました。
AIを支えるインフラ:AIの普及に伴い、計算リソースに対する需要が拡大
7月はデータセンター及び高性能コンピューティングが最高のパフォーマンスとなり、13.40%の高い月次リターンを記録し、年初来リターンは32.06%に達しました。メタとグーグルは「AIファクトリー」と呼ばれる大規模なAIインフラに数十億ドル規模の投資を行い、この動きが市場で好感されました。両社が行っている巨額の設備投資はすでに成果を上げており、収益を押し上げる要因となっています。AIインフラは大量のエネルギーを消費するため、これまでは安定電力の確保や送電網の整備などがAIインフラにとって重要な課題となっていました。現在では、原子力エネルギーの他に、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせたソリューションへの投資が進んでおり、電力供給の問題が解消に向かっています。原子力や再エネ・蓄電などのテーマも7月に堅調なリターンを示しており、これについては本レポートの後半で解説します。
AIインフラに関連するセクターも相対的に好調なパフォーマンスとなりました。光通信及びオプトエレクトロニクスは10.65%上昇し、2桁台の力強いリターンを示しました。データ伝送速度の向上やシリコンフォトニクスの統合といった革新的ブレークスルーがリターンを押し上げる要因となりました。
ヘルスケア分野は明暗を分ける展開:バイオテクノロジーが好調であった一方、医療サービスは低迷
ヘルスケア分野は明暗を分ける展開となりました。
技術革新に支えられたバイオテクノロジー・テーマは堅調に推移しました。
- 大麻及びサイケデリクスは13.23%上昇しました。シロシビンの治療効果を裏付ける臨床データや、欧州における制度面での進展がリターンを押し上げる要因となりました。
- ゲノミクス及び遺伝子編集は11.59%上昇しました。AIを活用した遺伝子診断や新生児ゲノム解析における革新的ブレークスルーが進展し、同セクターの重要性が高まりました。
- がん治療も堅調なパフォーマンスとなり、10.36%上昇しました。精密医療の進展がリターンを押し上げる要因となりました。
一方、医療保険は10.71%下落し、最も低調なパフォーマンスとなりました。保険会社のコスト増加懸念や規制強化の動きが悪材料となり、伝統的なヘルスケア企業のパフォーマンスが大きく悪化しました。薬局関連テーマも9.92%下落しました。償還率(薬局が保険会社などから受け取る治療費の回収率)の低下、インフレ率の高止まり、個人消費の減速、及び競争の激化などにより、薬局関連企業の利益率が圧迫されました。





