本レポートは、アジア太平洋地域の投資家にとってS&P 500が重要である理由を包括的に検証することを目的としています。本レポートは連続シリーズの第1弾であり、各レポートで異なる側面に焦点を当てることで、全体的な理解を深めることを目指しています。
アジア太平洋地域の経済が成長を続け、グローバル市場との統合が進む中で、S&P 500®が同地域の投資家にもたらす潜在的なメリットを理解することがますます重要となっています。S&P 500は米国の主要上場企業500社で構成される株価指数であり、米国経済の動向を示すだけでなく、グローバル市場のトレンドを測る指標としても重要な役割を果たしています。本レポートでは、The 500™とアジア太平洋市場との相関性、及びThe 500™がもたらす分散投資効果について検証します。市場が不安定な時期には、分散投資を行うことが特に重要となります。本レポートでは、2020年の株価急落に関するケーススタディを行い、相関の低い資産を組み合わせることのメリットについて説明します。
アジア太平洋市場との低い相関:なぜそれが重要なのか?
The 500がアジア太平洋地域の投資家にとって重要な理由の1つは、The 500とアジア太平洋市場との相関が低いことです。相関の低い資産を組み入れ、異なる地域に分散投資することにより、ポートフォリオ全体のリスクとボラティリティを軽減することができます。
S&P 500とアジア太平洋市場との相関性
相関とは、2つの資産がどの程度連動して動くかを示す指標です。市場間の相関が低い、または負の相関を持つ場合、一方の市場が下落しても他方の市場に必ずしも影響するわけではないため、リスクを軽減することができます。過去のデータによると、調査対象の5年間において、The 500と様々なアジア太平洋市場との日次相関は0.10~0.45の範囲に抑えられています。
米国株式市場の動きが、アジア太平洋地域の様々な株価指数に与える影響は、国・地域によって異なる傾向が見られます。図表1に示されている通り、シンガポールの株式市場は、短期(1年)及び中期(3年・5年)の両方の期間において、The 500と比較的高い相関(約40%)を示しています。オーストラリアの大中型株についても、短期と中期の両方で20%~30%の相関を示しています。一方、中国、香港、及びニュージーランドの株式市場はThe 500との相関が低く、短期と中期の両方で概ね10%を下回る水準となっています。インド、韓国、及び台湾などの他のアジア太平洋市場では、相関が0.10~0.45の範囲に収まっており、中程度の相関を示しています。