コンテンツリスト

2026年7月の米国株式市場の振り返り

2026年6月の米国株式市場の振り返り

2026年4月の米国株式市場の振り返り(2026年5月配信)

2026年3月の米国株式市場の振り返り(2026年4月配信)

転換点を迎えるアジア太平洋債券市場:2025年の為替動向と市場再編

2026年7月の米国株式市場の振り返り

「ひときわ輝く星があっても、空を照らすのは星々の輝きである」

市場概況

米国株式市場は7月、再燃した中東情勢の緊張、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を巡る見通しの変化、ならびにAI関連投資支出に対する慎重な見方などを背景に、変動の大きい展開となりました。ハイパースケーラーによる設備投資への懸念や、大型テクノロジー企業の決算に対する市場の反応がまちまちだったことから、市場が不安定となる局面も見られました。一方で、インフレの鈍化や底堅い企業業績が支えとなり、月末にかけて市場は持ち直しました。S&P 500は月間で0.1%下落し、ほぼ横ばいで7月を終えました

しかし、市場の内訳を見ると、相場をけん引する銘柄の裾野は大きく広がりました。S&P 500均等加重指数は7月に1.0%上昇し、時価総額加重型のS&P 500を2カ月連続で上回りました。こうした傾向は2026年を通じて明確に見られており、年初来ではS&P 500均等加重指数が13.3%上昇したのに対し、時価総額加重型のS&P 500は10.1%の上昇、S&P 500 Top 50はわずか3.0%の上昇にとどまっています。均等加重指数が継続的に相対的な強さを示していることは、市場の上昇が一部の超大型株に集中するのではなく、より幅広い企業へと広がりつつあることを示唆しています。

一方、中小型株は7月、大型株に対して出遅れる展開となり、S&P MidCap 400は2.4%、S&P SmallCap 600は1.9%それぞれ下落しました。月間では下落したものの、S&P SmallCap 600は引き続き米国の主要株価指数の中で最も高いパフォーマンスを示しており、年初来では21.5%上昇しています。これは、S&P 500の年初来上昇率10.1%の2倍を超える水準です。

セクター別・業種別動向

セクター別のパフォーマンスは、他の資産クラスの動向にも影響を受けました。地政学的緊張の高まりとエネルギー価格の急騰を背景に、エネルギーセクターは12.0%上昇し、セクター別で最も高いパフォーマンスとなりました。これは、7月にS&P GSCIエネルギー指数が22.5%上昇した動きとも整合的です。

一方、米国債利回りの上昇は、デュレーションの長いグロース資産や、その他の金利感応度の高い市場分野の重しとなり、バリュー志向のセクターへの幅広い資金シフトを促しました。こうした環境下で、金融(+6.2%)、不動産(+2.5%)、ヘルスケア(+2.4%)、生活必需品(+2.1%)は、市場全体を上回るパフォーマンスとなりました。

これに対し、AI関連の投資計画に対する慎重な見方が強まったことで、半導体企業から超大型ハイパースケーラーに至るまで、AIバリューチェーンの幅広い領域で調整が見られました。その結果、情報技術セクターは月末の最終2営業日に大きく反発したものの、月間では3.0%下落しました。こうしたセクター間のパフォーマンスのばらつきは、相場のけん引役が一部のテクノロジー株に集中する状況から、より幅広い市場要因へと移行しつつあることを示しています。

ファクター

セクターのけん引役の変化は、ファクター戦略にも同様に表れました。バリュー、インカム志向、ディフェンシブの各ファクターが好調で、S&P 500 Pure Value(+4.5%)、High Dividend(+3.8%)、Low Volatility High Dividend(+3.4%)、Buyback(+2.6%)、Low Volatility(+1.9%)などが、特に高いパフォーマンスを示しました。

一方、それまで相場をけん引してきたグロース株に関連するファクターは大きく反落しました。債券利回りの上昇に加え、AI関連投資に対する慎重な見方や将来の利益見通しへの不透明感が強まったことが、より遠い将来のキャッシュフローへの依存度が高い企業の大きな重しとなりました。その結果、Pure Growth(-12.4%)、Momentum(-11.0%)、High Beta(-10.1%)が、月間で最も低いパフォーマンスとなったファクター指数でした。これらの動きは、グロースやモメンタムから、バリュー、インカム志向、ディフェンシブ戦略へと資金がシフトする、2026年に入ってから最も顕著なローテーションの一つとなったことを示しています。

ボラティリティと銘柄間格差

市場の上昇銘柄の裾野拡大やセクターローテーションを背景に、米国株式市場では時価総額の大小を問わず、実現ディスパージョン(銘柄間のリターン格差)が拡大しました。一方、実現ボラティリティおよび銘柄間の相関は低下しました。同時に、AI関連投資から得られるリターンや超大型テクノロジー企業の業績見通しを巡る不透明感が続いたことから、インプライド・ディスパージョンは高水準で推移しました。

Cboe S&P 500 Dispersion Index(DSPX)は、一時47.51と過去最高値まで上昇した後、7月末には41.42となりました。一方、VIX指数は一時20.66まで上昇したものの、その後低下し、月末には15.99となりました。市場全体のボラティリティは月末にかけて低下したものの、インプライド・ディスパージョンが高水準にとどまったことは、個々の企業のパフォーマンスに当面大きな差が生じる可能性を、市場が引き続き織り込んでいたことを示唆しています。言い換えれば、投資家は市場全体にかかわるリスクよりも、個別銘柄固有のリスクをより強く意識していたと考えられます。

pdf-icon PD F 全ての記事をダウンロードする


「処理中です」 ...