はじめに
人工知能(AI)の分野はここ10年間において驚異的かつ革新的な進歩を遂げています。こうした状況を踏まえ、世界はここ数年において、AIの持つ莫大な可能性を認識するようになっています。AIはプログラムされたタスクだけを実行する能力から、テキスト、画像、及び動画などこれまでよりはるかに創造的なコンテンツを生成する能力へと進化しています。こうした影響力に伴って世界のAI業界は成長を遂げています。フォーチュン ビジネス インサイトによると、世界のAIの市場規模は2023年の5,153億1,000万ドルから2032年には2兆7,404億6,000万ドルに拡大し、その予想期間の年平均成長率(CAGR)は20.4%になると予想されています1。今後、AIの急速な発展とその潜在的な影響力は非常に大きなものになるように思われます。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P DJI)は2023年、S&P Kensho 人工知能イネイブラー指数の算出を開始しました。この指数は、AIの技術、インフラ、及びサービスを開発・可能にする企業のパフォーマンスを測定することを目指しています。本稿では、AIの技術及びバリューチェーンを紹介し、それらが提供する投資機会を測定するように設計された指数化アプローチについて詳しく説明します。
AI(人工知能)とは何か?
AIは、スマートフォンの技術から生成AIが搭載されたチャットボットに至るまで、私たちの日常生活に見事に溶け込んでいます。最初のAIシステムは、迷路から脱出し、その経路を記憶できるロボットマウスであり、1950年にクロード・シャノン氏によって開発されました2。AIシステムは今日、特定の人間の能力を厳密にまねるタスクを実行することができます。では、AIとは正確には何であり、その背後にはどのような技術があるのでしょうか?
AIの定義は様々ありますが、AIは一般的に機械が人間のような知能を示し、自律的に学習する能力を指します。AIは、機械学習、ディープラーニング、及び生成AIなど幅広い様々な技術を包含する包括的な用語です。