インデックス・プロバイダー
インデックス・プロバイダーは市場インデックスを設定・算出し、パッシブ運用商品の基盤となる知的財産のライセンスを発行する専門性を備えた企業です。
当社の定評あるSPIVAリサーチでは、20年以上にわたり世界中のアクティブ運用ファンドとそのベンチマークのパフォーマンス比較を測定している。
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インデックス・プロバイダーは市場インデックスを設定・算出し、パッシブ運用商品の基盤となる知的財産のライセンスを発行する専門性を備えた企業です。
インデックス・プロバイダーの業務は極めて重要です。 世界の金融の専門家や投資家は、市場のパフォーマンスに関するリアルタイムでの情報収集においてインデックスを重視しており、また、投資や経済活動の意思決定において、その重要性の大小にかかわらず、インデックスのデータを情報源として利用しています。
加えて、6兆米ドルを超える資産が市場インデックスのパフォーマンスに連動しています。これらの資産を運用する投資の専門家は、安定したインデックスの構築、綿密なインデックスの維持・管理、さらに途切れることのないデータ配信において、インデックス・プロバイダーに依存しています。
インデックス・プロバイダーのビジネス・モデルは、知的財産が集積した特別な商品を作り、通常はデジタル化して配信するというソフトウェア企業と対比できます。ソフトウェア企業のように、インデックス・プロバイダーの業務は、新商品の開発、ライセンス化、商品の配信、関連するサービスとサポートの提供が中心となっています。
インデックス・プロバイダーが何を行うかを理解するには、「何をしないか」といった点を考慮するほうが実際には有効でしょう。
インデックスを概念化して構築するためには、資産クラス、市場メカニズム、証券の分類に加え、最終的にインデックスと連動する投資商品に対する深い理解が必要となります。
インデックス設定のプロセスは一つのアイディアから始まります。設定が可能な全てのインデックスは、その目標がそれぞれ異なるとしても、明確で健全な目的がなければなりません。この時点から、インデックス・プロバイダーはインデックス設定に着手する前に、以下の問いに答えることになります。
例えば、あるインデックスが米国の中型株、欧州の債券、または金価格をカバーするとします。対象となる市場は、インデックスの「ユニバース」、「エクスポージャー」、「投資対象の集合」と表現されることがあります。ユニバースには、例えば「日本のテクノロジー関連大型株」のように非常に正確なものもあれば、「高配当低ボラティリティ株式」といったより複雑なものもありますが、常に明確に定義され、容易に定量化できなければなりません。
この問いに対する答えは、インデックス構成銘柄の価格が直ちに確認できる公開されたものかどうかによります。構成銘柄の価格が不明な場合、信頼できるインデックス値を決定することはできません。さらに重要なこととして、インデックス・プロバイダーは、インデックス内の証券が十分な流動性を備えていることを確実に把握していなければなりません。これは、インデックスの構成銘柄または構成比率に変更があった場合、インデックスのパフォーマンスの再現を図る金融機関が、インデックス構成銘柄の十分な量を確保できるようにするためです。
インデックスは、ベンチマーク、またはインデックスをベースとする商品としての有用性を備える必要があり、確実に特定のニーズに応え、かつ、市場性を有することが不可欠です。潜在的な利用者に価値をもたらすものでなければ、インデックス・プロバイダーが当該インデックスを構築するとは思われません。
インデックスをベースとした商品の基準となるよう、ライセンスを発行する前提でインデックスを構築する場合、インデックス・プロバイダーは、インデックス内の証券や他の金融商品が十分な流動性を備えていることを確認する必要があります。その結果として、インデックスのパフォーマンスの再現を図る金融機関は、インデックスを構成する証券や金融商品の十分な量を当初から確保でき、また、リバランスによって構成銘柄のウェイトに変更があった場合でも、容易に対応できるのです。
インデックスの構成銘柄が選定され、組入比率が決定されると、インデックス・プロバイダーはメソドロジーに従ってインデックスの算出を開始します。大半のインデックスは日次で計算され、その多くはリアルタイムで実施されます。
例えば、ダウ平均は2秒ごとに算出されます。ただし、ごく一部のインデックスについては、入力するデータの取得状況に基づき、月次または他のタイミングで算出されることもあります
インデックス・プロバイダーはこれらのインデックス値を、自社のウェブサイト、ブルームバーグやロイターなどのデータ再配信会社経由、インデックス使用のライセンス保有者へ直接データファイルを送信する形式など、様々な方法で配信します。インデックスが構築される際に「バックテスト」が実施されて、過去の日次のインデックス値が算出される場合もあります。これらのバックテストで算出された値は、現時点でのインデックスのメソドロジーで組み入れた証券に過去のデータを適用することによって得られ、当該インデックスが過去に存在した場合、どのようなパフォーマンスだったかの推定値を示します。ただし、バックテストのデータは、インデックスがどのようなパフォーマンスを示したかを理論的に推定する情報として提供されるだけで、その解釈には注意が必要です。そして過去のパフォーマンスは実在のものであれ、理論モデルに基づくものであれ、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。
バックテストのデータには、インデックスが設定日よりも前に存在していたと仮定した場合、
どのようなパフォーマンスを示したかを表すインデックス値が含まれています。
インデックスが公表されると、それが24時間、1年中休みなく機能するよう、リアルタイムでの継続的なモニタリングと日次の維持・管理が始まります。
市場やその他の状況は、インデックスに組み入れられる証券の価格に影響を及ぼすため、インデックス・プロバイダーは定期的にインデックスのリバランスを行う必要があります。定期のリバランスでは、各構成銘柄が採用基準を満たしていることを確認し、インデックスのメソドロジーに基づいて、どの銘柄を追加または除外するかを判断し、新たな組入比率を確定することがインデックス・プロバイダーに求められます。
継続的な維持・管理には、企業の合併、分社化(スピンオフ)、株式分割、配当や利払いなど、インデックス構成銘柄に影響を与えるコーポレートアクションに関する情報入手が含まれ、それが実際に起きた場合は、変更をインデックスに反映させます。例えば、インデックス内の企業が非公開になった場合、当該銘柄が取引所で売買されなくなるため、インデックスから除外されます。
インデックス・プロバイダーは、資格要件を満たした企業にインデックスの使用ライセンスを発行し、インデックスを利用する際に必要なサービスやサポートを提供することで契約の継続を促すとともに、インデックスを市場に広めることを事業目的とします。
商品需要を喚起するため、インデックス・プロバイダーは以下の業務を行います。
インデックス・プロバイダーは顧客のサポート業務を行うとともに、提供するサービスを通してインデックスの市場における認知度の向上を図ります。ファイナンシャル・アドバイザーやその他の仲介業者との関係を築き、インデックスをベースとした商品に対する顧客の理解度を高めてもらうことで、インデックス投資への支持を増やし、結果的にインデックスに対する需要の拡大を図ります。
全てのインデックスが同様とは限りません。
それはインデックス・プロバイダーにも該当します。
そのため、優れたインデックス・プロバイダーと、期待外れの恐れがあるインデックス・プロバイダーをいかに判別するかは重要です。以下の5つの特徴に注目することは、その方法の一つです。
一流のインデックス・プロバイダーは、インデックスが顧客のベンチマークとして機能するか、または投資の受け皿となるかを判断し、測定しようとする市場と正確に連動するインデックスをいかに構築するかに精通しています。
信頼性の高いインデックス・プロバイダーは、適切なタイミングで継続的にデータを算出・公表し、インデックスの利用者にとって必要なデータが途切れることがないように配信します。信頼性の高いインデックス・プロバイダーはまた、事業を継続して長期に渡ってインデックスを算出・公表する責任を持ち、利用者にメリットをもたらすよう努めます。
独立したインデックス・プロバイダーは、投資ファンドやその他の投資商品を一切販売しません。実務的には、インデックス管理チームと商業活動に従事するチームを分離することで、独立した意思決定を確実に行えるように努めています。
完全性についての評価を確立するには時間を要します。優れたインデックス・プロバイダーは、業界最高のビジネス慣行を採用し、しばしばそれさえも上回り、評価を落とすような潜在的リスクから自らを守るため、予防措置を怠りません。信頼できるインデックス・プロバイダーは、インデックスを再現した商品を購入する可能性のある投資家に対して潜在的に不利益をもたらさないよう、健全でないインデックスの概念は許容しません。また、信頼のおけるインデックス・プロバイダーは、潜在的な利益相反や、インデックスの客観性に影響を及ぼす、または及ぼす可能性があると考えられる点について、適切に開示します。
透明性に優れたインデックス・プロバイダーは、そのメソドロジーとインデックスのデータを一般に公表します。これにより、インデックス採用銘柄の選定や、組入比率や構成銘柄の更新に関する規則に対する疑問が生じることはなくなります。また、透明性に優れたインデックス・プロバイダーは、インデックスの算出方法について極めて明確に示しています。その結果、投資家は、インデックスがどのユニバースを測定し、どのような方法で測定するかを正確に理解することが可能になります。
第2章が終了しました。
この章で学んだことを確認するために、 簡単なテストを行います。