THE S&P 500 MARKET: 2023 年 4 月
個人的見解: 企業業績を受けて株価が続伸する一方で、出来高とボラティリティは低下
戦線が敷かれました。といっても、バイデン対トランプではなく、フロリダ州知事(ロン・デサンティス氏)対 Disney でもなく、デフォルト対債務上限でもなく、First Republic Bank(株価は 4 月に 75%下落、年初来では 97%下落しています)対同行の預金者でもなく、ましてや人工妊娠中絶をめぐる反対派対賛成派の戦いでもありません。ここで言う戦いとは、リセッション(景気後退)対プルバック(揺り戻し)の戦いです。景気が減速する一方で、コストプッシュ型インフレが高止まりしている影響で企業利益は許容範囲内の水準を維持しており、直前に予想が引き下げられていたこともあって、決算内容は予想を上回る結果となっています。雇用が堅調な一方で、人員削減の流れも続いていますが、雇用水準全体との相対比較や過去数年の雇用の増加を勘案した場合、削減の発表件数は多いものの、削減数はそれほどでもないようです。結果的に、4 月の市場はもみ合いの展開となり、最終的に 1.46%上昇して月を終えました。2 月から反発した 3 月の 3.51%上昇に続く上昇で、年初来では 8.59%上昇となりました。市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)があと 1 回だけ利上げを行い、有終の美を飾ることを容認しているようで、先物市場が示唆する 5 月 2-3 日の連邦公開市場委員会(FOMC)での 0.25%の利上げの確率は 85%となっています。とはいえ、利上げ終了はあくまで今サイクルの話であり、今後 10 年以内に利上げ局面は再び訪れるでしょう。現時点では、あと 1 回で利上げ終了(一時停止ではありません)というのが大方の見方であり、今や市場の関心は利下げの開始時期に移っています。FRB のドットチャートは 2024 年の利下げ開始を示唆していますが、そんなに先の話になると思っている人はいません。FRB が利上げを終了する可能性が高まる中(決定ではありませんが)、次の注目のテスト問題は、債務上限と政府支出をめぐる議論でしょう。市場は、ゲーム理論から「X デー」の答えを導き出そうとしていますが、これは公式な最善意思決定理論とは何の関係もなく、実際には財務省の「調整」と「定義」によって大きく左右されます。現時点において、デフォルトや政府機関の閉鎖を予想する見方はほとんどなく、「X デー」の 1 週間ほど前まで表立った政治的駆け引きが延々と続けられることになると思われます。しかし、最終的に政府支出が決定すれば、信用や税の状況、ひいては企業利益に影響が及び、勝ち組と負け組が出るでしょう。