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ホンダと日産の協業が進むべき道とは?販売台数や生産能力の現状も解説

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2024年12月、ホンダと日産自動車(以下、日産)は経営統合に向けた協議を開始すると発表しました。両社は2026年8月を目途に持ち株会社を設立し、その傘下に入る計画を進めていました。

しかし日産は方針を転換して基本合意書の撤回を決定し、日産が筆頭株主を務める三菱自動車の統合参加も見送られることになりました。そして2025年2月、ホンダと日産は正式に統合協議の打ち切りを発表しました。

一方、両社の協業自体は、今後も進められる見通しです。そこで本記事では、ホンダと日産がどのような形で協業を展開していくべきかを考察します。

両社における販売台数の推移

はじめに、ホンダと日産の両社の世界販売の動向について振り返っていきます。

【主要地域別】日産の販売台数の推移

日産の世界販売台数は2019年のコロナ禍前に500万台を記録していましたが、直近では300万台まで大幅に減少しました。特に、中国市場と北米市場での苦戦が顕著です。

日産に限らず、日本のOEM全体が中国市場で苦戦を強いられています。その背景として、主に以下の要因が挙げられます。

  • NEVの需要減少:中国政府の補助金削減などにより、EVの市場成長が鈍化
  • SUV人気と車種構成のミスマッチ:中国ではSUVの需要が高いものの、日産は小型車やセダンを主力としており、市場ニーズとの乖離が生じている
  • 3気筒エンジンの消費者イメージ:シリンダー数が少ないことで「パワー不足」「振動が大きい」などの懸念を持つ消費者が多く、販売に影響を及ぼしている

また北米市場では、以下の要因によって日産の販売が伸び悩んでいます。

  • 経済環境の悪化:景気後退の影響で、個人向け販売(小売り)が低迷。特に収入が比較的低い層の購買意欲が落ち込んでいる
  • フリート販売への依存:日産は法人向けの大口販売(フリート販売)に依存している傾向が強く、市場の不安定さが直撃。フリート販売が縮小すると、全体の販売台数も急激に落ち込む

上記の課題を抱える中、日産は販売戦略の見直しと市場適応の強化が求められています。

【主要地域別】ホンダの販売台数の推移

ホンダの世界販売台数は2019年には500万台に達していましたが、現在は400万台にまで減少しています。販売状況は地域によって異なり、中国やASEAN、インド市場などでは競争の激化や経済環境の変化により特に苦戦している状況です。

一方、北米市場や日本国内市場では、比較的安定した販売が続いています。北米市場でのホンダの人気が維持されている理由は、主に以下の点にあります。

  • 地域に根付いたブランド戦略:長年の信頼と知名度に支えられたブランド力
  • スポーティなデザイン:運転を楽しみたい若年層から支持されている
  • ファミリー層向けのラインナップ:SUVやミニバンなど、幅広い層に受け入れられる車種展開
  • デザインの統一感:乗用車からSUVまで一貫したデザイン哲学が好評
  • 販売金融の活用:キャプティブファイナンス(メーカー直営の自動車ローンなど)を通じ、顧客の囲い込みに成功
  • 優良な顧客層:クレジットスコアが高く、ローン審査に通りやすい安定した購買層を確保

そのため総合的に見るとホンダは特定市場での課題を抱えつつ、北米や日本市場では確固たる地位を維持している状況です。

グローバルにおける生産能力

続いて、ホンダと日産のグローバルにおける自動車生産能力について順番に解説します。

日産におけるグローバルの生産能力

現在、日産はターンアラウンドやリストラの一環として、生産能力の削減を重要な経営課題として位置づけています。特に、過剰な生産能力を適正な水準に調整するよう求められています。

2024年の実際の生産台数は約315万台であるのに対し、現在の日産のグローバル生産能力は年間500万~540万台規模であり、稼働率は約60%にとどまっている状況です。

しかし生産能力の8割稼働で利益が出る現在の収益構造で持続的な黒字経営を実現していくためには、生産能力を350万台規模まで削減する必要があります。

つまり、現在の540万台規模の生産能力を200万台程度削減しなければならないといえるでしょう。

生産能力の削減は、日本や北米、中国などの地域を中心に求められています。現時点ではタクトタイムやシフトなどの調整による対応が検討されていますが、今後はより大規模な生産体制の見直しや工場統廃合も視野に入れる必要があるでしょう。

ホンダにおけるグローバルの生産能力

2024年におけるホンダの実際の生産台数は約370万台で、現在の生産能力は約440万台と見られています。その結果、工場の稼働率は約80%と比較的安定した水準を維持しています。

地域別の生産状況を見ると、日本と北米では販売が比較的安定しており、生産能力の大幅な見直しは必要ないと考えられています。

一方、中国や南アジアでは生産能力が需要を上回っている状況です。市場の動向に応じて生産体制を最適化するため、過剰な生産能力の調整は必須でしょう。

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ホンダと日産の協業について

ここからは、ホンダと日産が協業を進める場合、どの分野でどのようなシナジーが期待できるのかを詳しく解説します。

まず注目すべきなのは、電動化の分野です。両社はこれまでどのような電動化戦略を展開してきたのか、そして今後どのような方向性を取るべきなのかについて、具体的に解説します。

電動車販売目標の現状

ホンダと日産はどちらも電動化を進めていますが、戦略には大きな違いがあります。ホンダはZEVに特化した方針を掲げ、特にBEVを中心に据えた長期的な戦略を進めています。

一方、日産はBEVだけにこだわらず、HEVやPHEVも積極的に活用する「全方位戦略」を採用しています。さまざまな地域や市場ニーズに柔軟に対応できるよう、体制を整えているのが特徴です。

2024年8月に発表された協業では、BEV向けの電池モジュールやe-Axleに使用するモーターやインバーターの共用など、BEVを中心とした取り組みが進められました。

しかし、協業の領域をさらに拡大していく場合、ホンダもBEVに限定せず、日産のようにHEVを含めた「全方位戦略」にシフトする方が望ましいという意見もあります。全方位戦略により広範な市場への対応が可能となれば、競争力の強化が期待されます。

パワートレインの「共通化」戦略

パワートレインの分野では、メーカー間の協業を進める上で「共通化」が重要なカギとされています。

従来のICEを搭載した車両では、主に以下のような要素で各メーカーが独自の個性を出すことができていました。

  • エンジンの種類
  • トランスミッションの選択
  • 加速性能、振動、燃費の調整

しかし、EVでは上記のような違いが生まれにくくなっています。ただし、これはデメリットではなく、むしろICEでは課題とされていた「加速の応答性」「ノイズ」「振動」などが改善されるという利点があります。

さらにEVにおいてパワートレインの個性が薄れやすいことを逆手に取り、複数のメーカーが共通のパーツやシステムを採用することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 開発コストの削減
  • 生産リソースの最適化
  • 大規模生産によるコスト競争力の向上

そのためOEM同士がパワートレインの共通化を進めることで、より効率的な開発・生産が可能になるでしょう。

パワートレイン戦略の方向性

ホンダと日産がパワートレイン分野で協業を進める際、「調達」「開発」「生産」の3つの要素が重要です。

パワートレインの協業を進めるなら、まず共通の部品や材料の調達を進めることが基本となります。BEVやハイブリッドシステムの主要部品について共通化を図ることで、調達コストの削減や安定供給が期待できます。

開発面では、特にソフトウェアの領域において人材不足が課題です。そのため、ハイブリッドシステムの共同開発やBEV向けの電池、e-Axleの共通化などが重要なポイントです。

工場の統廃合による生産効率の向上はコスト削減を目指す上では有効ですが、従業員の雇用や取引先サプライヤーへの影響を考慮すると慎重な対応が求められます。

現状では、調達や開発などの面で協業の効果を最大限に生み出していくことが、長期的に見て望ましい戦略でしょう。

部品共通化の深化に向けた具体的なシナリオ

ホンダと日産はEVのパワートレイン技術を効率的に開発するため、e-AxleやHEV向けの主要部品の共通化を進めています。ここでは、両社の現状と今後の協業シナリオについて解説します。

現状の協業方針として、日産はe-AxleやHEV向けモーター、インバーター、減速機などの共通化を推進中です。ただしBEVとHEVでは車両重量が大きく異なるため、共通仕様の最適化が課題です。

また、ホンダと日産は、e-Axle用のモーターやインバーターの共用を検討しています。ただしホンダのHEVシステムはエンジンと駆動輪を直結させる方式であり、スペースの制約が厳しくBEV用モーターの搭載は困難とされています。

今後e-Axleのみを共通化していく場合、日産は現在の方針を維持し、HEVは各社独自の設計を継続していくものと見られます。

モーター、インバーター、e-Axleを共通化することで、コスト削減の最大化が図れます。ただしHEVシステム間での相乗効果は生まれないことから、各社独自開発が必要です。

そしてe-AxleとHEVの両方を共通化していく場合、HEVの主要コンポーネント(モーター、インバーター、エンジン)も共通化していくものと見られます。

e-Axleの共通化と合わせれば、コスト競争力の強化が図れるでしょう。ただし、HEVのシステム統合に伴い車体側の再開発が必要となるため、達成難易度は高いといえます。

まとめ:部品共通化によるコスト削減がカギを握る

ホンダと日産は、それぞれ販売台数の減少や生産能力の過剰といった課題に直面しており、今後の成長には協業が欠かせません。特に電動化戦略においてはホンダがBEVを中心に展開する一方、日産はHEVを含めた多角的なアプローチを採用しています。

こうした状況の中、パワートレインやバッテリーといった主要部品の共通化を進めることで、コスト削減と開発リソースの効率化を実現することが可能です。結果として、両社ともに競争力を強化し、EV市場での持続的な成長を目指せるでしょう。

今後も両者の成長のため、協業による事業の発展が待たれます。

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