
中国市場の詳細や日本企業の今後は?:日系メーカーが勝ち残るには@weight>
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本記事の内容に加えて、中国市場における消費者ニーズの変化やOS開発競争など中国市場の理解を深めることができる内容を解説しています。
現在、自動車市場は中国企業が力を伸ばしています。また消費者ニーズの変化に伴い、あらゆる影響も出てきました。そのような状況下で、日本企業はどのようにして勝ち残ればいいのでしょうか。
本記事では現状をデータを交えて分析しながら、日経メーカーが状況打開するヒントについて紹介します。現在日本企業が抱える課題を改めて振り返り、勝ち残る術を見つけていきましょう。
NEV購入動機の大きな変化
まずは、NEV購入動機の大きな変化について解説します。
2019年と2024年の比較

2019年と2024年を比較すると、NEV購入動機が消費者ベネフィットからスマート化評価へ変化したことがわかります。
例えば、2019年にNEVを購入するとナンバープレートが取得しやすい、走行制限がないために毎日走り続けることができるといったベネフィットがありました。
しかし、2024年になると厳しい価格競争のなかで良品廉価な車が提供され、インフォテイメントが充実するようになっています。つまり、若年層から見ると自動車における「走る」「曲がる」「止まる」といった基本動作は、評価ポイントの対象にならないといえるでしょう。
さらに、2019年はNEVの販売地域が集中していたものの、2024年では各地域で販売されています。したがって、この5年間でNEVは誰でも購入できる自動車になってきたといえます。
変化による影響

NEV購入動機の変化によって、外資系ブランドのイメージが大きく変わりました。2019年ごろの外資系ブランドは購入することで一定のステータスを得られる信頼感があり、承認欲求を満たすアイテムとして認識されていました。しかし、2024年では外資系ブランドへの信頼感は消え去り、国産に関心を抱く消費者が増えています。
また、中国系企業のシェア率が約2倍になり、欧州系・日系は約半分に減少しました。さらに、パワートレイン別で影響を比較すると、NEVは4.4%から35.2%と8倍に成長している点も大きなポイントです。
SDV化における車載OS開発競争と協調
次に、SDV化における車載OS開発競争と協調について解説します。

SDV化における車載OSの開発は、大きく分けると自社開発グループと外部調達グループに分けられます。外部調達しているグループはファーウェイからの供給が拡大しており、すでにセレスやJACなどで活用されています。ファーウェイはIT企業であることから、その強みを自動車業界でも活かしていると推測可能です。
このような状況下で日本企業が戦うには、不透明なことが多いです。さまざまな意見が飛び交っているため、今後も注視して観察する必要があります。
また、ソフト開発は地政学リスクを考慮しなければならず、課題が多いのも実情です。中国で搭載した自動車を、欧米諸国で使えるかどうかについても調査の必要があるでしょう。
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動力電池の覇権
ここからは、動力電池の覇権について解説します。

動力電池は圧倒的に中国系メーカーが強く、市場の6割を占めています。次に韓国系が続いており、市場の多くがこの2か国です。日系メーカーでは、パナソニックのみが力を持っている状況です。
ただし、内製化に成功しているのは、BYDのみとされています。多くの場合、中国の電池メーカーから購入していると推測されています。
また、動力電池の開発競争が活発になるなか、固体電池の動きにも注目が集まっています。実際に少しでも価格を抑えるため、ナトリウム電池の開発やリサイクル技術の応用も実施されてきました。したがって、今後は動力電池の量産技術にも注目すべきといえるでしょう。
なお、期待されていた欧州系は勢力を弱めており、中国や韓国に太刀打ちできない状態が続いています。
BEV開発における戦略
最後に、BEV開発における戦略について解説します。

BEVの開発は、大きく分けると合弁と出資の2つです。例えば合弁の場合、トヨタとBYDがBTETという電気自動車の開発会社を作っています。トヨタやホンダなどは中国系のパートナーと手を組んで、次の電気自動車を開発していく動きも出てきました。
一方、フォルクスワーゲンは中国系の企業に出資し、電気自動車の開発を進めています。つまり、合弁・出資のどちらにおいても、協調路線のなかで価値を生み出していく動きがみられます。
まとめ:日本の強みを再認識することが重要な打開策

従来、車といえばガソリン車をイメージする方が多い傾向にありました。しかし、ガソリン車が生まれたのは1886年で、馬車に代わる交通手段として生き残ったのが始まりです。
自動車の創業期には非常に多くの自動車メーカーが誕生したものの、勝ち残れたのはごくわずかです。グローバルで成功したのは、日本と韓国のみといえるでしょう。
そのなかでリーマン・ショックによって世の中の流れが変わり、2017年以降は中国の新興メーカーが勝ち残るようになりました。
以上の歴史から、リーダーがチャレンジャーからの挑戦を受けたとき、どのような戦略が有効かを考えることがポイントです。そして、現時点で負けていることを強く自覚することが大切でしょう。
「誰と協調し、誰と競争するのか」を考えたうえで、独自の知恵を生み出し、コストを下げながら競争優位を築き上げてきたのが日本企業の強みです。強みを意識しながら、不利な状況をどのように挽回していくかを考えていくことが重要です。