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マーケット分析レポート S&P 500 2021年9月

米上院によるインフラ投資法案の可決と、暗号通貨への影響

World by Numbers: S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス株価指数による 2021 年 9 月の世界市場パフォーマンス・サマリー

ベンチマークが重要な理由

不動産投資:定量的なルール・ベースの指数を使用するグローバル分散投資

マーケット分析レポート S&P 500 2021年9月

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Howard Silverblatt

Senior Index Analyst, Product Management

THE S&P 500 MARKET: 2021 年 9 月
個人的見解:9 月は辛うじて乗り切ったが、10 月も新たな試練が待ち構えている

月初の株式市場は好調で 9 月 2 日には(今年に入って 54 回目となる)最高値を更新しました(4536.95、2020 年 11 月以降、終値での最高値を更新した日が毎月あったことになります)。その後は、好調さを維持したまま月末を迎え、四半期を締めくくるはずでした(与野党の対立が続く政治の紛糾を尻目に)。しかしながら、実際には全く異なる展開となりました。9 月は年間でパフォーマンスが最も低い月だという伝統を株式市場は見事なまでに踏襲し(これまでの 9 月の平均騰落率はマイナス 0.99%で、53.8%の確率で下落しています)、(控えめに言っても)月末まで厳しい展開が続きました。公平を期するために言えば(短期的には弱気相場だが、長期的には強気相場)、損失は制御可能なもので、売りも秩序立っていました(1 日の下げ幅が最大となったのは 9 月28 日で 2.04%の下落)。結局、9 月の下落率は 4.76%となりました(月間の騰落率がマイナスになったのは 2021 年 1 月のマイナス 1.11%以来。また、下落率は 2020 年 3 月のマイナス 12.51%以来の大きさでした)。第 3 四半期は僅かに 0.23%の上昇にとどまり(2020 年第 3 四半期は 8.47%上昇)、年初来では 14.68%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス 15.92%)、コロナ危機前の 2020 年 2 月 19 日の終値での高値(3,386.15)からは 27.21%上昇(同プラス 30.62%)、直近最安値となる 2020 年 3 月 23 日(2,237.40)からは 92.52%上昇(同プラス 97.28%)となりました。再び、公平を期すために言えば(何度も同じ表現を使いたくはないのですが)、9 月はのんびりとした夏季休暇を終えて市場が仕事モードに戻る月であり(これは疑わしいですが)、ワシントンの善人達も同様です。しかし今年のワシントンでは年次予算以外にも対応しなければならない問題があったようでした。政府予算が期限切れとなる数時間前につなぎ予算案が議会で可決され、大統領による署名がなされました(債務上限問題やいくつかの景気刺激策に関しては与野党間での協議が続いています)。また、お決まりの政治ゲームは一段と激化しています(弊社のインデックス委員会に政治的緊張の市場への影響を計測するバックテストの実施を提案します)。米連邦制度準備理事会(FRB)は年内のテーバリング開始(終了時期は 2022 年半ば)に向けた(暫定)スケジュールを示すと同時に、(政策金利見通しをまとめたドットチャートと共に)2022 年終盤か 2023 年初頭に利上げする可能性があることを示唆しました。当初の市場の反応は、調整には至らず僅かに下落した程度で、示されたスケジュールを受け入れていました。しかしその後、利上げに注目し、米国 10 年国債利回りは 1.50%を突破しました(1.56%まで上昇し、1.49%で 9 月の取引を終えました。2020 年 9 月末は 0.68%、2019 年 9 月末は 1.68%、1981 年 9 月末は 1 桁違って 15.85%でした)。こうした利回り急騰の背景には、年初からの値上がりを受けて利益確定売りのタイミングを待ち構えていた市場参加者(8 月末時点での市場の年初来リターンは 20.41%)、変異株の影響(大半の市場関係者はその影響を彼らの言葉を借りれば「一過性」であると見ています)、そして FRB の人員構成(2 人の地区連銀総裁が辞任し、民主党のウォーレン上院議員がパウエル議長の再任に反対しています。なお、後者は俯瞰的に見れば、民主党内での意見対立と言えます)といった問題もありました。

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米上院によるインフラ投資法案の可決と、暗号通貨への影響

米上院は 2021 年 8 月 10 日、超党派によるインフラ投資法案を賛成多数で可決しました。この法案はバイデン大統領の目玉政策の一つであり、総額 1 兆ドルを上回る規模となっています。これによるデジタル資産市場への影響は、金額的には小さいものの、暗号通貨の税務上の取り扱いで大きな影響が出る可能性があります。この法案が施行された場合、デジタル資産市場の参加者に対する税率の引き上げや新税の創設はありませんが、新たな申告義務が発生するため、デジタル資産投資家から徴収される税金は 280 億ドル増加すると推定されています。

一般に、米内国歳入法第 6045 条の規定によると、「ブローカー」の定義に該当する者は、顧客の名称、社会保障番号、及びその他の関連情報を記載したフォーム 1099 を米内国歳入庁(IRS)に提出し、取引ごとの総収益を申告する義務があります。今回のインフラ投資法案の仮想通貨条項では、この「ブローカー」の定義が拡大されており、「デジタル資産の移転を実現するサービスを提供する者」の定義に「分散型取引所(DEX)やピアツーピア(P2P)マーケットプレイス」も含まれることになります。

こうした定義の拡大により、分散型金融(DeFi)の取引所をはじめとするデジタル資産市場の参加者に大きな影響が及び、業界全体の負担が増す可能性があります。

分散型金融(DeFi)の多くの参加者は、デジタル資産の送信者や受信者を特定できないため、米内国歳入法第6045 条の申告義務を果たすことができない可能性があります。可決された法案の文言によると、幅広い市場参加者がブローカーの定義に含まれることになり、マイナー(採掘者)、デジタル資産を預かるサービス、ノード運営者、バリデーター(承認者)、スマート・コントラクト、オープンソース・デベロッパー、ハードウェア・ウォレット/ソフトウェア・ウォレットの開発者、DAO トークンの保有者などがブローカーとして扱われる可能性があります。また、以下のような場合にも個人投資家に影響が及ぶことになります:

  •  他の個人との間で暗号通貨を売買する場合
  • 暗号資産取引所(またはそれに相当する取引所)を通じて暗号資産を取引することは、単に 2 つの転送が同時に起こることであり、多くの場合ではブローカーまたはディーラーがテクノロジーを使用して取引を仲介する。また、分散型取引所(DEX)では、金融機関や事業体が一切介在せず、テクノロジーのみによって個人間の取引が成立する場合がある。

したがって、影響を受ける個人は金融機関レベルで申告を行うことが義務付けられます。従来の金融取引では、誰がブローカー(例えば、ファンド・マネージャーなどの金融機関)で、誰が顧客(例えば、ファンド・マネージャーのファンドに投資する投資家)なのかが明確であったため、金融機関は容易に取引を申告することができました。多くの上院議員がこの問題を認識しており、ワイデン上院議員、トゥーミー上院議員、及びルミス上院議員などは法案の文言の修正案を提出しました。具体的には、マイナー(採掘者)やハードウェア・ウォレット/ソフトウェア・ウォレットの提供者などをブローカーの定義から除外し、実際に申告することができる当事者(例えば、暗号資産取引所)のみに申告義務を課すことが提案されました。しかし、申告義務の対象者の範囲を狭めた場合、予想税収が約 51 億 7,000 億ドル減少する可能性があることが判明しました。ポートマン上院議員はツイッターの投稿で、「イノベーションを阻害せず、ソフトウェア開発者、マイナー(採掘者)、またはその他の非ブローカーに対して申告義務を課さないように、暗号資産取引に関する米内国歳入庁(IRS)への申告ルールを修正する」ことについて合意に至ったと述べましたが、法案の文言は原案のままとなりました。
ブローカーの定義を狭めることなしに法案が成立した場合、米内国歳入庁(IRS)への申告義務の適用範囲が非常に幅広くなります。一方、米国外の企業が所有・管理するブローカーなどは米国の申告義務の適用を受けないため、結果として人材やテクノロジーが米国外に流出してしまう恐れがあります。これにより、デジタル資産業界が米国にもたらす経済的恩恵が少なくなる可能性があります。ほとんどの暗号通貨は国境を超えて取引されるため、人材やテクノロジーが米国外に流出したとしても、暗号通貨指数全体には影響しない可能性もありますが、米国の暗号資産プロジェクトと米国以外の暗号資産プロジェクトの成長に影響が出る可能性があります。米財務省と米内国歳入庁(IRS)は、デジタル資産の税務上の取り扱いに関して正式なガイダンスをまだ示していないため、新たな申告ルールが施行されるまでに、少なくとも 18~24 ヵ月の準備期間が設けられると予想されます。現時点で、インフラ投資法案は 2023 年に施行される見通しとなっています。
S&P 暗号通貨指数は、ビットコインやイーサリアムを含む複数の暗号通貨のパフォーマンスに連動しており、日々進化するユニークな暗号資産市場に透明性をもたらすように設計されています。S&P DJI のデジタル資産ソリューションについて詳しい情報をお求めの方は、こちらを参照ください。

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World by Numbers: S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス株価指数による 2021 年 9 月の世界市場パフォーマンス・サマリー

(2021 年10 月1 日、東京=S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス)

  1. 全世界の株式市場パフォーマンス

    S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスの算出するS&Pグローバル総合指数(米ドル建て、配当なし。以下、全データについて同じ)によると、2021 年9 月の全世界の株式市場は4.08%の下落となった。9 月は、先進国市場が 4.17%の下落、新興国市場も 3.42%の下落となった。また、先進国大型株は 4.30%の下落、先進国小型株は 3.45%の下落となった(詳細は表1参照)。

  1. 国別パフォーマンス
    9 月の国別パフォーマンス上位は、ロシア、チェコ、カタール、コロンビア、インドネシアの順となった。米国市場は 4.63%で 48 ヶ国中 28 番目となった(表 2 参照)。 9 月の円建てでの日本市場は、プラス 3.29%であった。
  2. REIT 市場
    先進国の 9 月の REIT 市場は 5.90%の大幅下落となった。国別のパフォーマンス上位は、イスラエル、シンガポール、オーストラリア、カナダ、日本の順となった。日本の 9 月のREIT 市場は 4.81%の下落となった。米国の 9 月のREIT 市場は、5.93%の下落だった(表 3 参照)。

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ベンチマークが重要な理由

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Craig Lazzara

Managing Director, Core Product Management

私は先日、パッシブ運用をテーマとするオンラインセミナーに参加する機会がありました。視聴者の中のポートフォリオ・マネージャーは次のような興味深い質問をしました。「X%のリターンを獲得することが目標であれば、指数のパフォーマンスは関係ないのではないですか?言い換えれば、特定の絶対リターンを獲得したいのであれば、指数に対する相対リターンを気にする必要はないのではないですか?」

これは良い質問であり、多くの良い質問に対する答えと同様に、この質問に対する答えも場合によって異なります。つまり、付随する質問によって答えが違ってきます。X%のリターンを獲得することが投資家の目標であれば、どのような手段でその目標を追求しようとするかがポイントとなります。

投資の世界には多くの資産クラスがあります。金の延べ棒やビットコイン、または優れた芸術家の絵画などを購入する投資家もいます。しかし、ほとんどの場合、投資家や運用受託会社は証券に投資することにより絶対リターンを追求します。証券市場では、少なくとも2つの理由で指数のリターンが重要となります。

1つ目として、適切に構築されたベンチマークでは、投資家の機会集合を定義します。S&P 500®のような時価総額加重指数は、株式市場の価値に連動するように設計されています。株式市場全体の価値が変化すれば、指数のリターンにも直接的な影響が及びます

年間8%のリターンを獲得することが投資家の目標であると仮定し、投資している市場が20%下落した場合、投資家がその目標を達成することはほぼ不可能です。一方、市場指数が20%上昇した場合、8%のリターンで投資家が満足することはほぼあり得ません。絶対リターンは願望であり、相対リターンは実用的なものであると言えます。

2つ目として、市場指数に対するポートフォリオの相対リターンは、運用マネージャーのスキルを表します。お客様は、パッシブ運用によって市場平均並みのパフォーマンスを確保するか、またはアクティブ運用によって市場平均をアウトパフォームすることを目指すかを選択することができます。アクティブ運用マネージャーにとっての成功の尺度が、ベンチマークをアウトパフォームすることであれば、過去の実績を見る限り、ほとんどの期間において、大抵のアクティブ運用マネージャーはベンチマークをアウトパフォームできていません。実際に、長期の投資期間では、指数運用の優位性が非常に大きくなっています

したがって、パッシブ運用によって市場平均並みのパフォーマンスを目指す投資家は、市場平均をアウトパフォームすることを目指す投資家よりも良い成果を得る場合が多いと言えます。相対リターンを諦め、ベンチマークに対する超過収益を目指さないことが、絶対パフォーマンスを向上させる重要なカギとなるかもしれません。

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不動産投資:定量的なルール・ベースの指数を使用するグローバル分散投資

質問…

米国株式、国際株式、長期国債、米国財務省短期証券、及び不動産投資信託(REIT)の5つの主要資産クラス中で、過去20年間において複利リターンが最も高かったのはどれでしょうか?株式でしょうか?利回りがゼロ近くまで低下したため、答えは債券でしょうか?

いいえ。REITが最も高いリターンを達成しました。過去20年間にわたる各資産クラスのリターンを比較すると、REITが最も高いリターンとなり、年間複利リターンは10.4%となりました。伝統的な投資ポートフォリオにREITを加えることにより、過去のリターンを上回る収益を獲得できる可能性があります。

さらに、株式や債券で構成されるポートフォリオに不動産(例えば、農地、アパートの賃貸、住宅建築業者、または商業用不動産など)を組み入れることで、ポートフォリオの分散を図ることができます。「REIT」について考える場合、多くの投資家は「インカム収入」を思い浮かべます。そして、どのREITの利回りが最も高いかに注目し、そこで分析をやめてしまいます。しかし、これは非常に視野の狭い手法であると言えます。

以下では、REITを組み入れたポートフォリオを構築する上で最適と考えられる方法について考察します。

グローバルな分散投資

分散投資を行う上で投資家が犯しやすい失敗の1つは、自国の資産に投資先を集中させてしまうことです。例えば、世界の株式市場を時価総額で見た場合、米国の株式市場は世界全体の合計時価総額の半分強に過ぎません。しかし、米国のほとんどの投資家は約80%以上の資金を米国株式に配分しています。

もちろん、このホームカントリー・バイアスは米国の投資家に限ったことではありません。世界中の投資家がホームカントリー・バイアスに陥っています。特に小さな国の市場は世界の合計時価総額に占める割合も小さいため、ホームカントリー・バイアスが大きな問題となり得ます。REITの場合でも、米国のREITだけを投資先として検討することは適切ではありません。しかし、バランスの取れた最適なREITポートフォリオを構築する上で、グローバルな分散投資を検討することは最初のステップに過ぎません。理論上は、その他にも重要なステップがあります。

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